信号待ちで、ふと横を見たら槇の実です。
小さい頃を過ごした地域は、槇の木が各家々を取り囲むように植えられていました。
「槇垣(マキガキ)」と言われるものです。
太平洋に面した地域であり、約3キロに及ぶ白浜も在ることから、潮風除け、砂除けの為に。
そして、槇の木が燃えにくいという特性を生かし火除けの為に植えられた、この地域特有のものです。
〜3キロにも及ぶ美しい白浜。
国府の浜(こうのはま)〜
国府の槇垣の歴史は古く、安土桃山時代から続いているということです。
それほど長い歴史のあるものですから、自分にとって槇垣のある風景は当たり前のものでした。
狭い路地の両脇に綺麗に刈り込まれた槇垣が続く。
ごくありふれた日常の風景。
小学校の卒業アルバムの表紙です。
手前に槇垣が描かれています。奥のネットの向こう側が国府の浜になります。
このように槇垣は一つの文化として、この地域に根付いていたのです。
恥ずかしながら、この文化が地域特有のものだと知ったのは地元を離れてからずいぶんと経ってからのことでした。
今思えば確かに美しい風景ですね。
田舎の例に漏れず、ここも過疎化が進む集落です。通っていた小学校も廃校になったそうです。
安土桃山時代以降続いてきた槇垣もいつか見ることができなくなるかもしれない。そうなったら寂しいなぁ。
おっと、話がずいぶんと脱線しましたが、今日は槇の実の話でした。
槇垣で有名な集落からやや離れた場所にあった実家にも槇垣はありました。
その槇の木は少ないがらも毎年実をつけていました。
その実は食べることができます。
緑から黄色になり、やがて赤く色付き濃い紫色になったら食べ頃を迎えるのです。
子供の頃はたまに取って食べてました。
昨日見つけて、懐かしくて少し取っちゃった💧。
緑色の部分は食べられません。毒があるらしいですし、何より硬くて無理!
食べるのは紫色の部分です。
熟す前の赤いものは松脂のような香りがしますが、紫色に熟したものからはほとんど感じられません。
味は…はっきり言ってそんなに美味しいものではないです。
ねっとりとぬめりのある舌触り。ほのかな甘み。少しの渋み。華やかな香りがあるわけでもなく、全てが控え目な感じです。
渋みは…皮を剥いたら解消されるのかな??また機会があれば試してみようと思います。
息子はいたく気に入ったようで、一人でほとんど食べてしまいました。
蓼食う虫も好き好きですね。
とはいえ、やはりどんなものでも喜んで食べてくれるのは嬉しいものです。
槇の実、桑の実、さくらんぼ、木イチゴ、野イチゴ、ゆすらんべ、渋柿、ヤマモモ、アケビ、ウベ……それが実る季節になれば色々と摘んで食べたものですが、どれもめちゃくちゃ美味しいわけじゃないです。
でも、楽しいんですよね。
自然に実ったものを食べる分だけ摘んでいただく。
田舎育ちだからこそ経験できたことですね。
久しぶりに食べた槇の実は、槇の実の味でした。
相変わらず、めちゃくちゃ美味しくもなけりゃ、不味いわけでもありませんでした。
懐かしく、楽しい体験でした。ご馳走さまでした。
槇の実未体験の方は、見つけたら話のネタに食べてみるのも楽しいかもしれませんね。